オセイオズさんからの質問です。
ありがとうございます。
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塾のテストで出た問題なのですが、
2^(p−1)−1/p・・・@が平方数となるような3以上の素数pは3,7に限ることを示せ
@=k^2(kは奇数)と置いて分母を払うところまではしてみたのですが、あとは手つかず。
先生も、かなり難易度の高い問題であるとは言っていましたが、解けている生徒も2人ほど同じ教室に居ました。
こんな問題に接したとき、解法を理解して、とりあえずその解法を覚えるということを続けていれば、はじめて見るこういった難問にも対処(善処)できるようになるのでしょうか。ありがちな質問ではあるでしょうが、これは私をずっと苦しめている問題でもあります。
自信をもって、この質問にyesと答えることができれば、それは数学の勉強を将来に渡って継続する勇気を与え続けてくれると思います。
才能という話はあまり信じたくありません。全ての事柄が瞬時にセンスや直感によって判断できるのであれば、そもそも数学は不必要だと思います。自分に最初から備わってある直感やセンスだけでは処理できない事柄があることがわかっているからこそ、人間は公理を決め、定理をつくり、それらを文献に記録し、人と共有することで、新たな感覚(センス)を磨いて、積み上げてきたわけでしょう。
かなり哲学的な問題でもあると思いますが、とりあえず最初の問題のアプローチを教えて頂けると大変助かります。それから、このレベルがたとえば東大や京大に出たとしたら、いわゆる難問扱いになるものでしょうか、実際の試験現場で解けるレベルですか?
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まずは問題よりも先に後半の質問にお答えします。
個人的にはyesだと思います。
もちろん段階を経ずにいきなり何ランクも上の問題に出遭うと
解けないと思いますが、必要な知識があれば解けると思います。
またセンスや直感とは何もないところから出てくるものではなく
それまでの経験というデータベースの中から役立つものを
検索していかに速く発見するかということだと思います。
自分に最初から備わってある直感やセンスというのは
ほとんどなく、それらは後天的なものだと思っています。
なので初めて見た解法を覚えていくと、いろんな問題に
対処できるようになると思います。
一度でも初見の問題を解けると、楽しくなってくると思います!(^^)
解法を覚える時に「この解法は他にどんな場合に使えるかな?」
と考えることで使い方以外にも使用場面も結びつけて覚えるといいでしょう。
この問題が難問かどうかについては、
このような整数問題は今までは詳しく授業で扱うことがほぼなかったのですが
それでも習う知識で解ける問題でした。
つまり解説されたら「確かにそうだけど、そんなの思いつかないよ」と
思わず言ってしまうような問題でした。
なので難問かつ珍しい問題だと思います。
しかし今は数学Aで「整数の性質」を習うようになり(学校によっては習わない)
多少なりとも今までよりは整数に関する問題に対するアプローチの仕方が
身に付くようになったので以前よりは奇問ではなくなり、
それに伴って難易度の評価も少し下がると思います。
それでも個人的にはこれは難問だと思います(^^;
さて、それでは問題について解説していきましょう。
と言ってもこの分野はまだ勉強不足なので他にも良い解法が
あると思っていることを最初にお伝えしておきます(^^;
証明する命題はこちら。

が平方数となるような3以上の素数pは3,7に限る
最初はオセイオズさんの言うとおりこれを

とおいて、分母を払います。

最初の状態の式ではpの値によっては平方数になったり、
整数になったり、有理数(分数)になったりしますが
分母を払った後の左辺は必ず整数になります。
またpは3以上の素数より

となり、左辺は3以上の整数にしかならないことになります。
また

はp≧2のとき必ず偶数であるから、今

は必ず奇数である。
よって右辺も奇数なのでkも奇数である。
ここまでがオセイオズさんの質問文に書いてあったことですね。
このように整数に関して偶奇を考えることは
問題を解く手立ての一つです。
ここで指数のp-1の偶奇も考えてみよう。
pは3以上の素数なので奇数である。
よってp-1は偶数。
ここでもうひとつ、整数問題ではよくやることに
因数分解がある。
指数のp-1が偶数であることに注意すると
左辺の

は
2乗−2乗の因数分解ができる。
\left(2^{\frac{p-1}{2}}+1\right)&=pk^2\\
\end{align*})
p-1が偶数なので

は整数である。
またp≧3より

は1以上の整数だから、左辺の
,\left(2^{\frac{p-1}{2}}+1\right))
の2つのカッコ内はどちらも正の整数である。
ここで2つのカッコ内の数の差が2の奇数であることに注意すると
2つのカッコ内の数は互いに素である。
なぜならまず奇数なので素因数2は持っていない。
次に素因数3を持っているかを考えてみる。
素因数3を持つということは2つとも3の倍数ということだが
連続する奇数の差が2なのに対して
連続する3の倍数の差は3なので
連続する奇数がともに素因数3を持つことは不可能である。
同じ理由で3以上の素因数をともに持つことは不可能である。
よって2つのカッコ内は互いに素である。
右辺は

であることに注意して
)
の組み合わせを考えてみる。
2つの数は互いに素なのでkとpkはありえない。
また

であることとp≧3、k≧1であることに注意すると
@
)
A
)
B
)
この3組が思いつく。
しかしさらに考えるとkは素数とは限らないので素因数分解できることもあり
素因数分解したkを

とすれば

であり、適当に2つに分解すると

と

のように互いに素ではなくなってしまう。
今考えてるのは2つの互いに素な数の組なので

の適切な分解方法としては

と

のようにすべての素因数それぞれは
同じ側に集めないといけないことになる。
また必然的に同じ側に同じ素因数は偶数個ずつあることになる。
例えば

の場合は

と

や

と

なら互いに素だが

と

では互いに素ではないので不適切である。
したがって

は2つに分解するなら
互いに素な平方数に分解されなければならない。
そこで互いに素な2つの整数a、bを用いて

とおくと、

としても一般性は失わないので
C
)
D
)
という場合があることになる。
)
という組は
aとbがもともと差が2以上あり大きい方に3以上のpをかけると
差が2であることはありえないのでこの組はありえない。
ここまでのまとめ。
)
の組み合わせは
@
)
A
)
B
)
C
)
D
)
の5通りある。
では1つずつそれぞれの場合について考えていこう。
@
)
のとき

上側の式より

このとき下側の式に代入すると

よってp=3のとき平方数1となる。
A
)
のとき

下側の式より
\left(k+1\right)\\
\end{align*})
k-1、k+1は差が2なのでこの両方が2の累乗になるのは

、

のときのみで、このとき

これを今の式に代入すると
\left(3+1\right)\\
2^{\frac{p-1}{2}}&=2\times4\\
2^{\frac{p-1}{2}}&=8\\
2^{\frac{p-1}{2}}&=2^3\\
\frac{p-1}{2}&=3\\
p-1&=6\\
p&=7\\
\end{align*})
よってp=7のとき平方数9となる。
B
)
のとき

上側の式より
&=\left(k-1\right)\left(k+1\right)\\
\end{align*})
ここでpが5以上の素数のとき

は奇数である。
一方左辺が偶数なので右辺も偶数となるためには
k-1、k+1の少なくとも一方が偶数となることが必要だが
この2数は差が2なので必然的にどちらも偶数となる。
このとき両辺の素因数に注目すると
左辺では2という素因数が1個だけなのに対し、
右辺はk-1とk+1はどちらも偶数であり
2という素因数は2個以上あることになる。
よって素因数2の個数が両辺で異なり矛盾するので
pが5以上の素数のときBの上の式を満たすkは存在しない。
p=3のときは
&=\left(k-1\right)\left(k+1\right)\\
2\left(2^{\frac{3-3}{2}}-1\right)&=\left(k-1\right)\left(k+1\right)\\
2\left(2^0-1\right)&=\left(k-1\right)\left(k+1\right)\\
2\left(1-1\right)&=\left(k-1\right)\left(k+1\right)\\
0&=\left(k-1\right)\left(k+1\right)\\
\end{align*})
k>0より

となり、このpとkの値はすでに@で求めたものである。
C
)
のとき

下の式を見るとAでk=bとなっただけであり
Aより b=3 のときのみ成り立ち、
そのとき p=7。
これはすでにAで得ている値である。
D
)
のとき

上の式を見るとBでk=bとしただけであり
Bよりこれを満たすのはb=1、このときp=3、a=1。
これはすでに@で得ている値である。
以上@ABCDより

が平方数となるような3以上の素数pは3、7に限る。
大変お待たせして申し訳なかったです<(_ _)>
いやぁ、とても難しかったです。
他にもいい方法があると思います(^^; 2014/4/29
修正:一部説明を追記しました。 2015/4/21